ここ浦安高洲の海風にも確かな春の香りを感じるこの佳き日に、本
校第34回卒業証書授与式を挙行できますことは、教職員一同、こ
の上ない喜びであります。
ただいま、卒業証書を授与しました108名の卒業生の皆さん、御
卒業、誠におめでとうございます。本校での三年間で皆さんが積み
重ねた努力や弛まぬ姿勢には、敬意を表したいと思います。
蛍雪の功なり本日を迎えられたこと、心からお祝い申し上げます。
さて、昨今の予期せぬウィルスの襲来の中、例年とは違う形で卒業
式を行わざるを得ませんでした。かけがえのない卒業式の場をいか
にして設定できるか、また一方でいかにして健康を保持しうるか、
先生方とかなりの時間、悩み抜いて、この卒業式を企画しました。
卒業していく皆さんの晴れの姿を一目見たいと望んでいた御来賓の
方々に来校していただきたかった。また先輩である皆さんを心から
祝福したいと思っていた在校生の皆さんにも出席して欲しかった。
そして、とりわけ、誰よりも皆さんを慈しみ、皆さんをここまで手
塩にかけて育ててくださった保護者の方々には、
ほんとうに御臨席して欲しかった。心からお見せしたいと願ってい
ました。結果的に、この形で式を行うこととしましたことは、
誠に申しわけなく、校長としてつらい決断となり、
まさに断腸の思いでいっぱいです。しかし、皆さんの卒業式は仕方
なくこの形にしたのではありません。今の状況下で、
本校らしく最もふさわしく、精一杯の最高の式にしようと思ってい
ます。この卒業を祝い、本校を巣立つ皆さんの前途を心から期待し
ていることについては、これまでと同様、いや、これまで以上の思
いを持って職員一同この卒業式に臨んでいます。どうぞ、
卒業生の皆さんは、顔を上げ、堂々と胸を張って、これからの人生
に向けて歩み出してください。
人は生きて生活をしていると、様々に思い通りにならないことに出
くわします。今回のような感染症についてもそうですが、今年度は
度重なる自然災害もありました。こうした災難にはいつ遭うかわか
りませんが、思い通りにはいきません。思い通りにならないことは
他にもまだあります。例えば自分が生まれてくることも思い通りに
はいきませんし、子は親を選べません。
人は生まれてくるところから、思い通りににはならない運命にある
ように思います。病気にしてもそうでしょうし、人と出会うことや
別れることもまた然りかもしれません。このように思い通りになら
ないもの、それを「苦」といいます。そう、苦労の「苦」です。
もともとは仏教のことばです。「宿題を仕上げるのに四苦八苦した
」などと使う「四苦八苦」は仏教用語です。
こうした思い通りにならないこと、避けがたいことに出会ったとき
に、どう対応するか、その対応の仕方で、その人の人生の価値が決
まるともいえるでしょう。この世に生まれ、
日々を重ねつつ年をとっていくなかで、どう生きるか、
どう老いるか、出会いたくない物事に出会ってしまったらどう対応
するか、人間が生きるということは、日々、こうした「苦」への対
応の連続なのかもしれません。卒業生の皆さんのこれからの生活は
、人それぞれに様々ですが、こうした「苦」と向き合うことは誰に
でも課せられていることなのです。当然、戸惑ったり、
悩んだりすることもあるでしょう。少しでもその時に自らが判断し
決断する心の拠り所になることは、できる限り多くのことを知るこ
と、知っておくことです。「嫌い」とか「面倒だ」
とか思うかもしれませんが、これから皆さんが遭遇する未知の「
苦」に対応をしなければならないとき、知っておくことを増やすこ
とで、確実に選択の引き出しが増え、より豊かな判断を導き、
苦労を減らしてくれるはずです。情報を増やし、「知」
を増やすというこの「学び」の姿勢を忘れずに日々を紡いでいって
欲しい。現在、難局にある中、私からこの学び舎を巣立つ卒業生の
皆さんへの餞の言葉とします。
終わりにあたり、卒業生の皆さんの前途に輝ける幸が多からんこと
をお祈りし、式辞といたします。
令和2年3月5日
千葉県立浦安南高等学校
校 長 勝 田 幸 裕