校長室から

校長室から

夏季休業明け(校長室から)

夏季休業明け
 多くの人が、十分に英気を養ったとは言い難い夏休みが終わり、30日から分散・時差登校での課業となりました。生徒向けに、2つのメッセージを流しました。
 一つは、R(risk)=H(hazard)×Ⅴ(vulnerability脆弱性)で示される災害リスク方程式を使って、感染予防の徹底についてです。デルタ株の出現で、H(危険事象の発生のしやすさ)が高まりました。リスクを減らすためには、V(被害の受けやすさ)を低減するしかありません。健康チェック、マスクを外す場面の会話の禁止、不織布マスクが推奨されましたが、行事を控え、学びを止めない行動の徹底をお願いしました。水害等のハザードマップがありますが、被害を受けやすいとされる高い地域でも、建物の高さや迅速な避難行動といった予防活動によって、被害を軽減できるものです。今は、見えない災害を予知して、柔靭な予防力により持ちこたえることが求められていると感じます。
 もう一つは、我慢、辛抱の世の中で、生徒の心が心配です。そこで、上の句が高杉晋作のものとされる「おもしろきこともなき世を面白く、すみなすものは心なりけり」という句を紹介しました。「シベリアにも春は来る」にしようかと迷いましたが、我慢、辛抱だけでない行動を生徒に訴えたかったのです。

 終わりに夏休み中、酷暑、豪雨の中、全国大会に生徒が参加しましたので、結果を紹介します。U20日本陸上選手権で、陸上部の吉木翼君(3年)が男子400mで優勝。全国高等学校総合体育大会(インターハイ)には、陸上部とフェンシング部が出場し、陸上部の浅野大地君(3年)が男子400mで7位入賞。フェンシング部は団体で一回戦を勝ち進み、個人戦でも活躍しました。また、全国高等学校総合文化祭の将棋選手権大会では、女鹿紘喜君(1年)が個人戦5位入賞しました。他の部活動も、新人戦や文化祭等に向け、制限がかかる中、校内外での切磋琢磨を感じました。これで、全ての3年生が受験という団体戦に向かいます。

 多難な休業明けです。保護者、同窓会、地域の皆様、御支援、御協力のほど、よろしくお願いいたします。

学校説明会お礼(校長室から)


 8月4日(水)は、全日制の学校説明会を行い、約2000名弱の中学生、保護者が来校してくれました。感染防止と猛暑対策により、居住市別に3回に分けて受付時間を設け、入口で整理券を配付して教室を割り振って全般説明を行い、自由見学とした部活動や校内見学を含め、概ね90分程度の滞在時間となったと思われます。酷暑の中でご苦労をおかけしましたが、多くの皆さんに本校の教育活動の一端をお見せすることができました。来校していただいた皆様に感謝いたします。
 中学校の方は、大規模会場での実施は困難と判断され、昨年度に引き続き説明会ができず、ホームページで動画を視聴してもらう形をとることとしました。高校の方も、説明は動画を視聴してもらう形でしたが、中学校についても、主役である生徒が登場する場面を多く設け、校舎内の様子を含め、どのように授業を受けているか、できるだけリアルに学校の特色が伝わるよう丁寧に作成したいと思っています。
 
 コロナ禍で「我慢」の日々が続いています。我慢とは、一般には、自分を押さえて耐えるという意味で使われますが、本来は自分に執着して我を張る、強情という意味で、これは煩悩の一つと言われています。イライラ、怒りの原因となる我慢ですが、オリンピック選手のインタビューでは、我慢した甲斐があったという使い方もされています。これなどは我慢が、精進になったもので、凡人にはなかなか難しいものです。
 我が我がの「が」を捨てて、お陰お陰の「下」で暮らせ、という良寛さんの禅語がありますが、自力と思える努力も、本当は他力の働きではないかと思えれば、自らの活動が利他につながり、精進につながるのではないかと思います。コロナ禍で、他者とのかかわり、「利他」という言葉が注目されているそうです。東葛生には、自己のためが、他者のためにつながる利他を意識した言動で、社会を引っ張る存在になってほしいと願います。

 今日、1号棟4階の自習室は、机に向かう3年生の凛とした空気がありました。大講義室では、大学見学がなかなか難しい中、OGOBによる大学紹介講演に部活動を終えた2年生が集まっていました。

 夏を制する者は受験を制する。がんばれ東葛生! 中学生!

東葛リベラルアーツについて(校長室から)


 校長室からにようこそ。
 マスク越しで見る風景のまま、夏休みとなりました。

保護者の皆様をはじめ、本校関係者の御支援、御協力に感謝申し上げます。

前任校でも、講話で話したことを中心に、校長室だよりを載せておりましたので、本校でも、校長室から見て感じた東葛飾高校の様子を紹介してみようと思います。第1回目は、リベラルアーツ講座の紹介です。

 

本校には、もう10年以上の歴史となっているリベラルアーツ講座という土日を中心とした課外講座(中学生を含めた生徒と保護者を対象とした公開講座)がございます。本校の先生や保護者の方が自ら担当したり、先生方が開拓して外部講師を頼んだりして、実現しているものです。

 今日は、私が7月に聴講させてもらった講座を2本紹介します。それぞれの話を聴いて切実に感じるのは、やっぱり本業の方の話は、説得力があり、刺激を受けるなということです。

4日(日)には、臓器移植について、東京学芸大学付属国際中等教育学校教諭の佐藤毅さんと、埼玉医科大学総合医療センター臓器移植センターにお勤めで、長く東京都で臓器移植コーディネーターをされていた櫻井悦夫さんに講演をいただきました。これは、本校の濱田先生が企画してくださったものです。

佐藤さんは、保健体育の先生です。養護教諭と司書教諭の免許をお持ちで、命について考える授業を多くの学校でされています。本校では、「命の授業~臓器移植」というテーマで、6年前から講演していただいているそうです。

はじめに、「命について、しゃべれるようになる」が目標の授業ですとしたうえで、臓器移植を勧めることが目的ではなく、臓器移植を通して「いのち」を考える授業だと宣言してお話しが始まりました。脳死、臓器移植についての説明を経て、ドナー(臓器提供者)やレシピエント(移植希望者)として、自分なら、家族ならどう考えるかという意思表示について具体的に考えさせるものでした。また、聴講者に様々な問いかけがあって、最後に、「生きるとは」という質問の中で、20数年前本校生だった西田英史さんの本「ではまた明日」が紹介されました。

続いてお話を伺った櫻井さんは、臓器移植コーディネーターを22年間されていた方です。「やっていた時は、無我夢中だったが、辞めてみてすごいことをやっていた」と実感したという話から始まり、命をつなぐことが可能となった臓器提供と医療の進歩について説明された後、臓器提供の場面に直面して、希望する家族、辞退される家族の事例を紹介し、一つ一つの事例で全く同じはなかったと述懐され、「本当に臓器提供はだれのためでしょうか」という問いを提示してくれました。最後に、「親より必ず長生きしてください」というメッセージがあり、多くの人の命に向き合ってきた経験から発せられた若者への強い願いを感じました。

土曜日に1,2年生とも模試があった次の日の日曜日でしたが、参加した中学生・高校生、保護者の方々も深く考え、また満足した半日となりました。

 

10日()には、NHK国際放送のアナウンサー(キャスター)を経て、現在東京大学大学院の研究員として活躍されている松本祐香さんの講演がありました。これは、本校の内久根先生が企画してくださったものです。
 前半は、ニュースキャスターの道を続けながら社会人入試で大学院に進まれ、博士号をとられるまでの御自身のキャリアについて、お話していただきました。神戸で生まれ、その生い立ちの中で、阪神淡路大震災を経験されたことが契機となって進まれた道だったそうですが、「決して、アナウンサーを目指したわけではなかった。」「自立して生活していくため、今ある状況で、できる限りのやれることをやってきた。自分自身に期待して目の前のチャンスに取り組んできた。」という力強い言葉が印象的でした。

後半は、アナウンサーとして東日本大震災を伝えるという壮絶な経験を通して、この仕事には技術とハートがもっと必要だと実感し、大学院に進んだという話があり、その後、国内外の被災地を訪問し、キャスターとして伝える場面を通して、これまで解決されないまま積み重なってきた社会の課題が災害によって顕在化していく様子や、災害が自らの町の良さを見直すチャンスとなった事例などを数多く紹介していただきました。

講演後、生徒の質問に、丁寧に親身になって答えてくださったのが印象的でした。その中で「苦しかった時期は、振り返ってみると短かったと感じる。」「コロナは必ず終わる。コロナは全世界が影響を受けた。そして、影響を受けたすべての人が、人とつながることってすばらしいということを感じたはず。」「それは、これからの社会の希望になるのでは」というメッセージを残してくださいました。

当日は、中学生は授業公開で参加できませんでしたが、ジャーナリストや語学を学びたいという高校生や保護者の皆さんが参加され、特に生徒にとっては、そのお人柄を含めて素敵なロールモデルとなったと思います。

 

夏休みにも講座が予定されています。今後も、参加させてもらうのが楽しみです。