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今年度も10月を迎え、後期がスタートしました。
以下は、全日制及び中学校の始業式でお話しした内容です。教科横断の学び、人の生き方、自主自律とは何かを意識しながら、組み立ててみました。著作権の関係からスライドで提示した図表等を掲載できず、伝わりにくい部分があと思います。ご勘弁ください。
皆さん、おはようございます。後期のスタートとなりました。1年生は学校に慣れ、2年生は学校の中核として、3年生は上級学校を見据えた活動が本格化して毎日を過ごしていると思います。東葛生と接していると、改めて、やりきれる生徒が集まる学校だと感じます。それでも、混迷の時代とか閉塞感とか、ネガティブに未来を表現する言葉もあふれていて、これからどうしていったらいいのか悩んだり、戸惑ったりしながら日々を過ごしている人も少なくないと思います。
今日は、私が、この1年ぐらい疑問としてきた「問い」についてお話しします。とっかかりは、昨年度の高2生と行った修学旅行の比叡山延暦寺です。
そこで、お坊さんの話がありました。法話ですから、「人間は、どう生きるべきか」というテーマなんです。その中で「一隅(いちぐう)を照らす。此れ則ち国宝なり。」という言葉の説明がされました。一隅とは、片すみという意味で、世の中は、何か大きな光で明るくなるのではなくて、一人ひとりが自分のいる場所で、ろうそくのように自らが灯かりとなって周りを照らし、懸命に生きることが大事だという意味です。そうだなと思いながら、旅行から帰って日常が始まり、忘れそうになるんだけど、「なぜ、懸命に生きるのか?」もう少し、理屈で説明できないかと、考え始める自分がいました。
それから、いろいろ本を読むたびに、答えを探していました。そして、この夏休みなんですが、生物学者の福岡伸一さんの本に出会います。(「最後の講義 どうして生命にそんなに価値があるのか」)その中に次の一節がありました。「人は、エントロピー増大の法則にあらがって生きる存在である。」これを読んだとき、ろうそくの灯かりとバチっと一致したんです。
そうは言っても、いきなり、エントロピーが出てきて、気になりますね。物理や化学ででてくるので、ここにいる半分ぐらいは説明できるんだと思いますが、「世の中のものは、時間とともに自然に壊れていく」「覆水盆に返らず」と説明される熱力学第2法則であります。この宇宙の大原則があるにもかかわらず、人類のような生命現象は、秩序が生まれ、進化している。つまり、あらがっているというわけです。
福岡さんは、これを生物実験で実証します。ねずみが、チーズを食べます。食べたもののエネルギーは、ねずみが動くことと、もう一つは、細胞を作り変えることに使われます。うんちというのは、食べ物のカスより、古い細胞を捨てている分量の方が多いそうですね。人間の体は、1年ですべての細胞が、食べたものの原子や分子によって入れ替わっていて、交換されている。つまり、細胞は、酸化したり、老廃物がたまって壊れていきますが、生命は、壊われるよりも先回りして、積極的に細胞を作り替て、必死に新陳代謝して抵抗している。
また、福岡さんは、このことを数理モデルで説明しています。(この斜面は、万有引力の法則とエントロピー増大の法則を同じものと見立てていますが、)坂の上に生命の輪が載っています。そして、分解する速度が、合成する速度より少しだけ速ければ、円は反時計回りに、坂を上り返そうとする力が働くというわけです。
私は、坂を上っていく矢印に、「人が懸命に生きること」を見る思いがしました。そしてもう一つ。分解が合成より速いということは、この輪っかはだんだんと短くなる。これが、寿命です。だから、自分でこの炎は消してはいけないんです。
もう少しだけ、続けます。私は社会科の教員ですから、人間を集団、人類ととらえます。「エントロピー 人類 本」と検索したら、この本が出てきました。(「エネルギーを巡る旅」古舘恒介著)エネルギーをどう活用して、文明を築いてきたのかという本ですが、人類の チャレンジ・アンド・レスポンス、自然界に対する「あらがい」の道のりを読み取ることができました。
また、僕の思考は地理ですので、空間の多様性が、興味の対象です。エントロピーの増大の法則にのっかれば、多様性は、分断を生むとなるんだろうと思うんですが、地理を学ぶことは、価値観を認め合う 共生と分断の解消を目指すという、人類のあらがいにつながっていくことではないか、と考えました。
まとめです。「下り坂を上り返そうと頑張っているのが生命だ」。これは、フランスの哲学者、アンリ・ベルクソンの言葉です。人類の抵抗を見てみると、ただ「頑張る」とか「一生懸命」という単純なものだけでない、「とまどい」や「ぶつかり合い」とか、もうすこし、どろどろしたネガティブなことも混ざり合っているという状況で説明できるでしょう。 ただ、みんなが幸せになることを目標に、坂を上っているんだと見えてこないでしょうか?
さて、ここまで、一人一人が懸命に生きる。その意味について話してきたんですが、最後に、東葛生に、一言問いかけておきましょう。「自主自立って何?」
改めて、いろいろなろうそくがあります。ろうそく一つ一つが、一隅を照らしています。そして、互いが共鳴しあい、全体を明るくしています。
これは、リーダシップについて、説明した図ですが、灰色の部分は、セルフ=リーダーシップとあります。自律という文字もここにあります。東葛生には、ここから、緑色のところまでを、見渡し、目指してほしい。
最後に、まとめのメッセージを送ります。理想や信念に向かって自己を導いている人は、すでに半分リーダーである。その姿を見て誰か一人でも後についてくれば、まさにリーダーである。自主自律とは、自分と他者が深くつながること、自他の同化ではないだろうか?
今日は これをまとめとします。
令和4年度、半年よろしくお願いします。
一昨日、本校のソメイヨシノが開花しました。昨日、終業式を迎えて令和3年度の教育課程が終わりました。保護者、同窓会、地域の皆様の支えがあって、コロナ禍の学校運営を大過なく進めることができました。感謝申し上げます。
「校長日誌」と題していましたが、名ばかりのまま年度末となってしまいました。今後は、「校長室から」と改題し、講話などを紹介してまいります。
以下、3月24日全日制終業式・中学校修了式で講話した内容です。
おはようございます。
令和3年度が、区切りを迎えます。一年の最後に、こうして全校生徒を前にお話しできること。感謝したいと思います。
寺田寅彦さんという物理学者が、「正当に怖がることは難しいものだ」という言葉を遺しています。
この2年間のコロナ対応を考えたとき、その通りと感じます。それでも、本校においては、皆さんが自分事としてとらえた行動の積み重ねで、正しく怖がるに割と近づいた対処ができたんじゃないかと感じることができました。この一年、学校の感染防止対策への協力ありがとうございました。
もう一つ、正しく怖がることで、気になることがあります。ウクライナの情勢です。これについても、自分の身近においても起こりうるものとして本質や背景をつかみ、国際社会の叡智がどうやって光明を見出していくか。どうか、自分事として見つめていってほしいと願います。
さて、今日は、1年間の評価の日です。皆さん「自分超え」がどのくらいできたか確認してほしいと思います。また、「人生やり直しはできないけど、見直しはできる」と言います。成長を実感するとともに、明日に向かうための反省もお願いします。
「多彩な才能あふれる生徒たち」。これは、東葛生を語るときの枕詞です。在校生から「東葛は居心地の良い学校です。長所は褒めてくれます。変なところはほっといてくれます。」と聴いたとき、自己と他者を肯定して生きることができるのがこの集団の長所だと感じました。そして、授業や、行事や部活動で、皆さんが互いに切磋琢磨していくことが、東葛中学校・高等学校の成長の原動力です。次年度に向けて、良い準備をしてください。
最後に、来年度に向けて、高校の環境整備について、2つ伝えます。
①4月から教室などに、新たなWi-Fi環境が整備されて、皆さんの端末を通信料の負担なくつなげられるようになります。これによって、一人一人が情報端末機器を文房具として活用して、先生方と皆さんが一緒になって、その効果的な活用方法を模索しながら、新たな東葛の学びを創り上げてほしいと考えています。
②教室のエアコンが、新しいものに更新されます。冷房が効きにくい教室の改善が期待できると思います。これは、PTAの御尽力によるものです。以上、御披露いたします。
人に頭を下げること、また、下げられることもあります。そして、これとは別に「頭が下がる」思いになることがあります。この一年、具体的には触れないけれど、皆さんや先生方の行動に「頭が下がる」思いをしました。来年度も、感謝と尊敬の関係があふれる東葛であってほしいと願います。
終わりに、年度末年度初めは、事故も多い時期です。ウキウキドキドキする時節ですが、ピリッと一味も聴かせて、正しく怖がる実践をお願いします。以上、年度末の校長の言葉とします。
気候変動や感染症の拡大、民主主義や資本主義への信頼感の損失、社会の分断など、人類は大きな課題に直面している。災害が頻発し、国際社会は不安定で、多くの課題が立ちふさがる中、高校生には、世界をより良い方向へ導く志を持つことが期待されている。
上記のような表現が、教育を語る際、枕詞に置かれる一年でした。
学力学習状況調査では、全国の中3生に「将来の夢や目標はありますか」という質問をしています。その肯定的回答率が、全国平均68%で、年々下がっているそうです。
わたしは、これは、いい意味で「なるほど」と思いました。しかし、うまく、説明ができませんでしたが、その後、あるコラムで、「夢や目標があいまいなままの方が、変動社会には適応的なのではないか?」「時代の本質を見抜いているのは、子供たちなのかもしれない。」とあり、これかなと思いました。知の探究や協働的な学びにより、具体的な夢や目標だけではない、「未来をなんとかできる自信」を身に付けようとしている生徒が育ちつつあるからです。
一年が終わります。コロナ禍の中、保護者・地域をはじめ多くの皆様に、本校の教育活動を支援、応援していただきありがとうございました。
新年は、新学習指導要領の実施年。社会に開かれた教育課程の実現に向け、一歩を踏み出す年です。どうぞよろしくお願いいたします。
以下は、ROKKOKU PROJECTの一環で旭町地下歩道に展示した本校生徒の作品です。