新型コロナ対策で放送を通じてでしたが、生徒の皆さんにお話しした内容です。
「心理学者クランボルツのキャリア理論:計画的偶発性理論について」
今日で1学期が終わります。臨時休校の2か月間、休校明けの2か月間、それぞれを振り返って、皆さんはどのような思いをもっていますか。
新型コロナウイルスの感染が再び拡大しています。収束が見通せない、先の見えない閉塞感が続いていくことになりそうです。一方で、季節は廻り、夏休みが始まります。とりわけ3年生にとっては進路決定で大切な時期であり、頑張りどころでもあります。
今日は、皆さんの進路を形作っていく上で、心に留めておいてほしいことをお話しします。
まず、皆さんに問います。皆さんには夢がありますか。将来の進路につながる目標をもっていますか。既に決まっていて、その夢に到達するための道筋が見えているなら、すばらしい!ぜひ納得いくように、努力を重ねてください。一方、まだ決まっていない人、わからない人もいると思います。それでも大丈夫です、夢は見つかるものです。
アメリカのスタンフォード大学のクランボルツ教授が提唱したキャリア理論に「計画された偶発性理論」(Planned Happenstance Theory)があります。
その理論の大切なポイントは3点あります。
1「キャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定される」
子どものころから夢に描いていた職業に就いている人は実際には少ない。むしろ、人生の様々な出会いの中で、夢や目標は変わっていくものです。ただ夢や目標が変わった時点で、それまでの経験がリセットされる、つまり無駄なものとして流れ去るのではなく、積み重なっていくものと捉えます。ここが大事なところです。
(例)山中 伸弥 氏 京都大学iPS細胞研究所長・教授
2012年ノーベル生理学・医学賞 受賞、 文化勲章 受章
中学、高校と柔道部に所属し、10回以上の骨折を経験、整形外科医を目指す。
医師免許取得後の研修医時代にインパクトのある出会いを経験。
① 不器用で手術が苦手、②この世のものとも思えないほどおそろしい指導医、③現代医学でどうしても直せない病気で苦しむ患者
結果として、臨床医をあきらめて、基礎医学の研究医を目指し、後にiPS細胞の開発につながった。
2 「偶然の出来事・出会いを計画的に増やすことで、結果的に多くの夢・目標に出会い、 自分の可能性を広げることに繋がる」:(計画された偶発性)
3 「偶然の出来事・出会いを生みだすための5つの行動指針」
1 好奇心(Curiosity):新しいことへの興味・関心をもつこと。
2 持続性(Persistence):失敗に屈せず、納得いくまで続けること。
3 柔軟性(Flexibility):柔らかく、他者の意見や新たな視点を受け入れること。
4 楽観性(Optimism):物事をポジティブに考えること。
5 冒険心(Risk Taking):結果が不確実でも、一歩踏み出す勇気をもつこと。
現代は、社会の変化のスピードが速く、先が見通せない予測困難な時代と言われています。加えて、「With コロナ」の日常が続き、閉塞感を感じてしまいがちです。このような時代にこそ、先の見通せない「未来」よりも「今」に焦点を当て、5つの行動指針を実践することで自らの可能性を広げていくことが大切ではないでしょうか。今、まだ夢や目標が定かでなくとも、「偶然」に対するオープンな構えで毎日を過ごしてください。
毎日の健康観察の実施、手洗い・咳エチケットの励行、早めの水分・塩分の補給など健康保持に留意してください。皆さんにとって、今年の夏が充実したものとなるよう願っています。
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