今日はある先生の学級通信の一部(抜粋)を紹介します。
生き方が変わる
「限界まで頑張れば、見たことのない景色に出合うことができる、自分自身が想像もしなかった場所まで行けるって、うちのお父さんは言うんだ。飛行機が時速二百キロ超のスピードで滑走路を走るといつしか空を飛んでいるように、人間だって限界まで走ればどこか違う場所にたどり付ける。生き方が変わるって、お父さんに教えられたんだ。ぼくはサッカーでは限界までいけそうもない。だから勉強をしてみようかなって思ったんだ。」
これは『金の角(つの)持つ子どもたち』という小説で、中学受験に挑む小学6年生が主人公のお話で、その主人公が日本一の難関校を受験しようと決めたきっかけとなった友だちの言葉です。サッカーのクラブチームに入って将来はプロの選手を目指していた主人公とその友だちは、上位の地域のトレーニングセンターの選抜に落ちてしまいます。プロ選手が無理だとわかって次に目指したのが最難関中学の受験。普通では遅すぎる6年生の4月に入った塾での頑張りの末…。中学受験の話ですが、大学受験生にも是非読んで欲しい作品です。涙ぼろぼろでした。
限界まで頑張って一つでも高い段階にたどり着くと、そこから見える世界は違います。筑波山の頂上から見える景色と富士山の頂上から見える景色が違うのと同じです。
一般受験でも勉強する期間はあと8ヶ月。この期間で生き方が変わるかもしれないのです。推薦の人は期末テストまでの約1ヶ月を死ぬ気で頑張ってさらに評定を上げ、その後は小論文がある人はその対策、志望動機や面接対策を。万が一推薦が取れないことも考えて一般受験にも備えての勉強も。指定校推薦を取れるような高い評定を持っている人は、本当に今までこつこつとよく頑張ってきました。部活もやりながらの人は尚更です。誰でもできることではありません。指定校で合格を決めればもう受験勉強は必要ないのですから、卒業までの間は大学で必要なことが勉強できます。経済学をやりたい人はその入門書のような面白い本がたくさんあります。法学部に進もうという人は、裁判の面白い判決の本や身近な法律についての本なんてどうでしょう。英語について言えば、大学生になると英検ではなくTOEIC(トーイック)になるので、その勉強をしてもいいでしょう。高校生のうちから始めれば一般受験の人に大きく差を付けられます。推薦が決まって勉強をしなくなって、大学入学後のクラス分けテストで最下位クラスになって授業が物足りず時間が無駄になったという自業自得な先輩もいます。
「受験は団体戦」というのは、先に決まった人も一般入試の人が決まるまで一緒に頑張ろうということです。どちらかが上とか下とかいうことは全くありません。私も、毎日真面目に一生懸命なみんなの姿を見て、少しでもお手伝いができればとこうやって学級通信を出しています。だから団体戦の一員です、私も。
この学級通信は今年度すでに18号目、これまでも生徒の言葉とそれに対する担任の先生のウィットに富んだコメントが交わされ、クラスの生徒たちへの愛情にあふれています。
学級担任、教科担任、学年担当、生徒指導、生徒会、進路指導、部活動顧問、さらに学校全体の学習、教育課程、行事、式典、環境整備、健康安全などなど、教員の仕事は見えるところばかりではなく多岐に渡り、日々それぞれの場所・場面で、それぞれの教師のやり方で「愛情と熱意」をもって取り組んでいます。
教員はやりがいに満ちた仕事です。未来を育て、創造する仕事です。魅力ある仕事でなければ、こうして本校卒業生が教育実習に10名も戻っては来ないでしょう。
やりがいを抜きに一人歩きするブラックなイメージをなんとか払拭するためにも、働き方改革を進めるとともに、夢、希望に向かって生徒と共に挑戦する教員の姿を見つめていきたいと思います。