天津小湊野外実習
今年度(平成27)も、天津小湊野外実習を実施しました。天津小湊野外実習は、本校の設定科目「サイエンス・ラボ」の一環として、理数科1年生(1年8組)の生徒全員を対象として行っています。SSHの指定期間中は、補助も受けています。9月27日(日)~29日(火)2泊3日、旧天津小湊町の内浦山県民の森を拠点として実施、岩田(地学)・増田(生物)・馬場(実習助手)・皆川(生物・担任)の4名が引率しました。2年生での修学旅行までに、理数科全員が、科学未来館・課題研究発表会見学(2回)・野外実習・東大千葉大見学と5回の校外学習に行きますが、野外実習は1年生での最大の行事です。
9月27日(日)
8:40 前日、千葉大でのSSH課題研究中間発表会の見学があり、ギリギリの生徒もいましたが、船橋駅に全員が集合しました。雨でしたが、車窓から地形の変化などを見ながら、11時過ぎ、安房小湊駅に到着、資材運搬のため、車で先発していた岩田先生の出迎えを受け、宿(内浦山県民の森)のマイクロバスで宿へ、実習開始となりました。
雨は上がっていたものの空模様が怪しく、予定変更、昼食後、宿の協力もいただき、近くでツリーテーリング(樹木調べ)を行いました。次に、露頭で地層調査の基本、クリノメーターを用いた実習を行いました。さらに、翌日に延期した植生調査の場所の下見、天候も影響したのか、今年は、例年より多くのヒルが出現、担任も後になって、血を吸われていた事が判りました。
夕方、宿に帰り、入浴・夕食を済ませ、地層についての講義の後、恒例の「葉っぱテスト」を行いました。20数種類の樹木の葉っぱから、10種類を出題、うち8種類がわかれば合格、ただし、合格するまで、控室での勉強とテストを繰り返さなくてはならないというものです。今回は、10点満点2人を含め11人が一発合格、再試4~5回で翌日へ持越しが4人、最後は再試9回目で合格でした。ポイントのつかみ方に得手不得手があるようです。
早々と合格した組は、雲の切れ間から、今年最後のスーパームーンを観測しました。時折、不気味なキョンの鳴き声も聞こえました。



9月28日(月)
7:30の朝食に少々遅れ気味の生徒もちらほら、フィールドワークでは、健康管理も含めた体力が必要です。野外での経験は自分の将来を決める一因となります。ヒルに吸血されても気にならないなら野外向きですが、室内での実験向きではないかも知れません。
晴天に恵まれ、まず、2地点4班ずつに分かれ、植生調査を行いました。ロープで一片10mのコードラート(コドラートとも、方形枠)を設置し、枠内のすべての樹木の位置・樹高・樹種と林床(地面)の草本の被度(どれくらい覆っているか)等を調べるものです。少し簡略化した方法で、胸高直径(高さ120cmでの直径、沖縄では130cm)等は計測していません。最初に行う樹高の目測が難しいようで、最初は、自分や友達の身長の8倍はある木の高さを6mと算出することもしばしば見られます。また、何を勘違いしたのか、樹高を調べずに撤収しようとする班もありました。
植生調査の後は、バスで千葉県立中央博物館分館海の博物館に近い海中展望台の向かいの鵜原海岸へ。今回大潮とあって、スコリアの地層が見られる所まですんなり歩いて渡れ、運よくスコリアの固まったボールを拾えた生徒もいました。一方、今回は動物の遺骸の漂着が少なく、砂浜で魚の死体にヒメスナホリムシExcirolana japonicaが群がるようすは観察できませんでした。
お弁当で昼食を済ませた後は、吉尾海岸へ徒歩で移動、断層・不整合・コンボリュート構造・生痕化石等を観察しました。この後、バスで少し北の鴨川青年の家近くへ移動、例年は前の海岸で枕状溶岩を観察しますが、今年は台風で観察場所そのものが崩落、北の波浪の力の大きさを感じて、例年通りの鴨川漁港との間の八岡海岸へ移動しました。ここまでの堆積岩と違い、主に火成岩を観察しました。


バスの車窓から、キョン除けのネットのある畑・休耕田・キョンが逃げ出した施設跡を見ながら、宿に帰り、夕食後、植生調査の結果をまとめました。2地点での植生に思いのほか違いが見られ、食いついた班もいました。並行して、葉っぱテストの再試も実施、最大9回の再試で全員合格となりました。
9月29日(火)
最終日です。宿のバスで千葉大海洋バイオシステム研究センターへ移動、センターの前の磯で潮間帯の動物を中心に観察採集を行いました。大潮のため、潮間帯の下の方まで観察でき、ヒメメリベ・タツナミガイ・生きたタカラガイ等が採集できました。弁当の後、センターの実習室を借りて、採集した動物を調べ、結果をまとめた後、採集した動物を海に「返し」ました。
この後は、あわただしく、後片付けをして、徒歩で安房小湊駅へ移動、帰路につきました。学校に帰ってから、班ごとのミニ課題研究が待ってます。頑張りましょう。
この場を借りて、お世話になった方々、ご支援いただいた方々に御礼申し上げます。ありがとうございました。




追記。後日のSSH講演会の前、風で体育館に舞い込んだシロダモの葉を1・2年生の理数科の生徒数人に見せたところ、その場の全員が正解できました。