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2019/03/08

平成30年度全日制卒業式式辞

| by 船高99
式辞

 意富比の森の木々が芽吹き、沈丁花の香りが春の訪れを告げています。この佳き日に、多くの御来賓の皆様の御臨席を仰ぎ、卒業証書授与式を挙行できますことは、大きな喜びであり、感謝の念に堪えません。

 ただ今卒業証書を授与いたしました359名の皆さん、卒業おめでとうございます。
 人生の節目に臨み、まずはこれまでの皆さんの成長を見守り、時には厳しく指導してくれた御家族、先生方など、一緒に歩んでくださった周囲の方々への感謝の気持ちを忘れないでいただきたいと思います。
 私が皆さんとお会いしたのは、昨年4月のことでした。決して長い時間を共有できたわけではありませんが、授業はもとより、部活動、たちばな祭、陸上競技大会などで見せてくれた、真剣な眼差し、爽やかな笑顔、そして何事にも全力で取り組む姿から、本校が理想の学び舎であることを確信し、誇らしく感じてきました。その時々の皆さんのパフォーマンスは、青春のただ中にある若人の情熱に他なりませんでした。
この3年間、皆さんは多くの友人に出会ったことでしょう。友との語らいが日々の生活に潤いをもたらすことは勿論ですが、折々に悩みや喜びを分かちあえる真の友のあることは何よりの宝です。そのような関係をお互いに築いて、長い道のりを進んでいければ大変素晴らしいことです。

さて、改めて振り返れば、皆さんの高校生活は、入学の時に思い描いていたとおりの日々だったのでしょうか。答えはそれぞれだろうと思いますが、3年間で得たものが何だったのか、この機会に問い返してみてください。
 当たり前のことですが、授業では相当の知識を蓄えたことでしょう。それは大学受験を突破する手段でもあったかも知れませんが、船高生なら、学びの本質はさらに別の次元にあることを理解しているはずです。とはいえ、真理を追究しよりよい社会を築くために、学ぶ意義を肌で感じ学理を追及する厳しさを実感するまでには、まだ暫く時間がかかるのかもしれません。

皆さんが進む未来は、科学技術の進展が加速度化する中にあって、予測不可能な社会になると言われています。例えば人工知能=AIがあらゆる分野に進出し、これまで人の手によっていた多くの仕事が失われてゆきます。AIが、車に乗れば目的の場所までハンドルを握らずに連れて行ってくれ、家の中ではメンテナンスやセキュリティー対策を施し、いつでも清潔を保ってくれるのです。医療技術は格段の進歩を遂げて、瞬く間に病理が発見され、人は疾病というものと疎遠になり寿命が飛躍的に伸びるという話も耳にします。夢のような素晴らしい世界に違いありません。
しかし、AIにデータを蓄積するのは人間です。そのため、データを組み込む者は、高い倫理観や公正な価値観などを有していなくてはなりません。また、病気を見つけ高度な治療を施せたとしても、AIが患者一人ひとりの気持ちに寄り添うことは難しいでしょう。 
一方、SNSが一般的な通信、意思表明の手段になった今日、便利なツールを利用して自己顕示、自己満足のために、不適切な発言や動画を投稿するニュースが後を絶ちません。また、SNS上の発言の一部が切り取られて不特定多数から批判を浴びる、いわゆる炎上も度々起こっています。主張の全体を見通さず、その根拠も背景も考えることもないままに人格も含めたすべてを否定したり、無定見に称賛したりするような状況が生じているわけです。こうした事態は、倫理観が極めて未熟であったり、深い思考を停止したりした人々が、便利なツールに踊らされている現象であると考えます。

本校を巣立つ皆さんは、科学技術の革新や社会のグローバル化など、どれほど変化が激しい中にあっても、培った叡智によって必ず対応していけるものと信じています。社会がいかに変わろうとも、最も大切なのは、人を思いやる優しさや寛容な心であり、多様な人々の価値を認めてともに生きる姿勢であり、普遍の価値に裏打ちされた公正な態度に基づく生き方です。こうした意味で、高校生活で得たものが、学問的資質にとどまらず、豊かな人間性や逞しい人間力であったならば、これ以上に嬉しいことはありません。

ところで皆さんは、失敗をしたことがありますか。失敗など一つもないという人もいないと思いますが、これまでの人生を着実に歩んできた皆さんは、むしろ多くの成功を重ねてきた人が多いのではないでしょうか。そのため「失敗を恐れて易きに流れる」精神が、知らずのうちにあなたの心の中に宿ってはいませんか。
第一線で活躍するリーダー、社会の進展に寄与する研究者、未到の記録に挑むアスリート、そして立ち行かない企業を立て直す経営者などの話には、必ずといっていいほど若いころの失敗談が出てきます。それは裏を返せば、単に与えられたことだけに満足をせず、未知なるものへの挑戦を重ね続けた証しでもあるでしょう。
政治家であり教育者でもあった大隈重信は「個人としては幾多の失敗を重ねたが、しかし恐縮はせぬ。失敗はわが師なり。失敗はわが偉大なる進歩の一部なり。失敗に落胆しなさるな。失敗に打ち勝たねばならぬ。」と言っています。取り返しのつかない失敗を薦めているのではありません。力のある皆さんなればこそ、志を立てて挑んで挫折したとしても大抵のことならば取り返せる、むしろそうした経験が人生を一層輝かせることもあるのです。

皆さんの行く手には、必ず困難が待っています。仏教の四苦の教えを引くまでもなく、人生は困難の連続です。すべてに見放され、一人不幸を背負い込んだような気持になることがあるかもしれませんが、決して諦めてはいけません。道が窮まったかのように思えても、解決の光明は必ず見えてきます。落ち着いて糸口を探る泰然とした姿勢、強靭な精神こそが、人生航路を切り拓く真の人間力なのです。
そして困難と同じくらいの幸せが、いつでも皆さんの足もとにはあります。それになかなか気づけないのも、また人の常です。身近にあるささやかな幸せを掴むことが、遠くをめざす勇気につながり、顔を上げて歩き出すエネルギーになることも忘れないでください。
皆さんの前途に幸多かれと願っています。

最後になりますが、保護者の皆様、お子様の御卒業、誠におめでとうございます。本日は立派に成長されたお子様の姿に、感慨も一入のことと御拝察いたします。学校を代表して、これまでお子様に注がれてきた愛情と御苦労に敬意を表しますとともに、本校にお寄せいただきました御支援と御理解に対し心から感謝申し上げまして、式辞といたします。

平成31年3月7日
                     千葉県立船橋高等学校長
 安藤 久彦


08:51 | 式辞