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2019/04/10

平成31年度全日制入学式式辞

| by 船高99
式 辞

例年より長く愛でることのできた桜の花は、今日も眩く朝日に映えて、皆さんの入学の時を待っていたかのようです。
 ただ今入学を許可いたしました361名の新入生の皆さん、入学おめでとうございます。数ある高等学校の中から本校を選び、難関を突破してきた皆さんを、私たちは心から歓迎いたします。

 本校は、大正9年10月に創立された船橋中学院に源を発し、旧制船橋市立船橋中学校の時代を経て、県立船橋高等学校となり、今年、創立百年の節目を迎えました。この間、本校を卒業した多くの先輩は、各界のリーダーとして、国内はもとより世界各地で活躍しています。そして在校している先輩たちも、学業をはじめあらゆる活動に熱心に取り組み、高校生活を充実させています。
皆さんは、一世紀にわたり重ねられた伝統の上に、船橋高校生としての生活を始めることになります。入学に際してそんな皆さんに、私は一つの問いかけをしてみたいと思います。それは「あなたは何を求めて船橋高校の門を叩いたのか」という問いです。即座に答えられる人はいますか。

これまで皆さんは、先生から教えられた学習内容の理解に努めて、優秀な成績を収めてきたからこそ、本校に入学してきたはずです。高校入試を突破するには、正しい答えを求めて勉強することが第一であり、より速く、より効率的に正解を導くことが、優秀さの証明であったのかもしれません。それらも大切な能力の一つであると考えますが、高等学校では、もう少し違った観点から、学習の意義を見いだしていくことが必要になります。
霊長類、特にゴリラの生態研究において日本の第一人者である、山際寿一京都大学総長は、「現代の人間はどうしても正解を求め、より正解に近づくことばかりを考える。そのためにフレキシビリティーを失ってしまうのです。本当はもっといろいろなやり方があるはずなのに、みんな同じように振る舞う。それは直観力を使っていないからです。」と仰っています。
単に正解を導く力だけなら、人間は人工知能=AIには勝てないでしょう。しかし、多くの人々の思いや感情が重なって構成されている社会、全く同じことが繰り返されない日々において、本当に役立つのは、AIにはない多くの経験から学んだ多面的な見方であり、画一的な回路の中では想定できない事柄に、様々な発想を拠り所として柔軟に対応していける力なのです。
山際先生が言う直観力とは、多くの経験と知識に基づくひらめきや創造力のことだと思います。そして、若いうちは定まった解き方にとらわれずに、あらゆる面から検討して結論を導く方法を、自分で見つけることが大切なのだと、先生は伝えたかったのではないでしょうか。

昨今、新しい学びのあり方として「探究する力」が重視され、大学入試も、長年の定型的な問題から、思考力、判断力、表現力などを用いて答えを導く形式に変わる傾向にあります。そうした流れの中、本校は、平成21年度にスーパーサイエンスハイスクール=SSHの指定を受けて以来、生徒の探究力を養う研究に取り組んでおり、本年度から、新たに5年間の継続指定を受けることになりました。これまでの成果を生かしながら、すべての生徒が蓄えた知識を総合的に活用して、自立的に探究する力を身につけられるよう、さらに取組みを深めていきます。探究力を養う作業は、まさに思考力、判断力、表現力を鍛え、仮説に対する試行錯誤を繰り返しながら、深い学びに達する方法を組み上げることです。
皆さんには、こうした本校の学習環境を生かして、教室で獲得した知識を重ねるだけに留まらない真の学びを、自ら求めていってほしいと願います。

 ところで皆さんは、長くメジャーリーガーとして活躍してきたイチロー選手の引退会見を見ましたか。数々の記録を塗り替えてきた偉大な選手が発した「他人より頑張ったとはとても言えないけど、自分なりに頑張ってきたことははっきり言える、これを重ねることでしか後悔を生まないということはできない」という言葉、或いは「あくまで測りは自分の中にある、自分なりにその測りを使いながら、自分の限界をちょっと超えていくということを繰り返して、いつの間にかこんな自分になった」という言葉に、当たり前のことを当たり前に積み重ねること、他人との比較ではなく自分との戦いを乗り越えていくことの大切さを、改めて教えられました。凡事徹底という言葉もありますが、類い稀な結果を残したイチロー選手が、淡々とそれを説くことに何物にも代え難い重みがあります。
日々の鍛錬を着実に積み重ねることでしか目標は達成できない、逆にそれを確実にやり遂げることができれば目標に必ず到達できるというイチローの言葉を、これから様々な活動にチャレンジしていく皆さんに贈りたいと思います。

今年は本校が創立百年を迎える記念すべき年であり、改元による令和という新しい時代が幕を開ける年でもあります。船橋高校第二世紀の第一歩を創造する皆さん、そして平和や国際協調を希求する新たな時代を生きていく皆さんが、先ずは「何を求めて船橋高校の門を叩いたのか」の問いに対する確固たる答えを持って、充実した高校生活を送り、一人の人間として成長してくれることを願っています。

 最後になりましたが、保護者の皆様、お子様の御入学、誠におめでとうございます。大切なお子様をお預かりした私たちは、お子様の成長を第一に考えた教育活動に努めてまいる所存ですが、多感な高校生を指導・支援していくには、保護者の皆様との協力・連携が欠かせないものと考えます。御家庭におかれましても、これまで以上にお子様との意思疎通を密にしていただくとともに、本校の教育活動に対して深い御理解と御協力を賜りますようお願い申し上げます。
 本日、新入生の前途を祝福いただいたすべての皆様に改めて感謝申し上げ、新入生の高校生活が実り多き日々になることを心から祈念して、式辞とします。

平成31年4月9日

千葉県立船橋高等学校長  
 安藤 久彦 


08:44 | 式辞