11月に千葉県立美術館で開催された『千葉県高等学校総合文化祭 美術工芸作品展』で、美術部の生徒が、昨年に続き、全国大会の出品者に選ばれました。選ばれたのは、2年生で部長も務める田中茜さん、同じく2年生の小島詩織さん、これも2年生の白井温大くんの3人。千葉県代表の10人の中にひとつの学校から3人も選ばれるのはめったにあることではありません。たいへん光栄なことだと思っています。
この3名は、2023年の夏に、鹿児島県で行われる『第47回全国高等学校総合文化祭美術・工芸部門(主催:全国高等学校文化連盟)』に作品を展示するとともに、さまざまなイベントに参加してきます。
選ばれたのは次の作品です。
『あのね…』 田中 茜
学校からの帰り道、仲のよい友人とのおしゃべりは高校時代のもっとも楽しい思い出です。夕暮れの景色をバックに、そんな二人の姿を情感たっぷりに描いた作品です。会話が聞こえてくるような二人の表情は、作者が特にこだわったところ。くりかえし何度も描き直した部分です。この二人を中心に風景や小物などが周囲をぐるりと取り囲む構図は、まるで世界中が二人を温かく見守っているようです。細部に至るまでおろそかにしない制作姿勢が、作品をたいへん力強いものにしています。
『生誕祭(カラヴァッジョ「エマオの晩餐」より)』 白井 温大
バロック時代の画家・カラヴァッジョを敬愛する作者が、画集で見つけた絵の構図を生かして、まったく違う作品に作り上げました。モデルを務めたのは美術部の仲間たちです。制作にあたっては、絵画の古典技法を積極的に取り入れて、重厚な画面作りを目指しました。途中、カラヴァッジョと自身のギャップに悩んだりしたこともありましたが、その中で作者自身も大きく成長しました。元になったカラヴァッジョの絵と見比べていただくと、作者の工夫やこだわりがわかると思います。
『弟はシールドのむこうで』 小島 詩織
家族でレストランに行ったときの風景を描いた絵です。シールドに周囲の様子がさまざまに映り込み、こんな時代だからこそ生まれた作品だといえます。しかし、この絵から辛さや悲しさは少しも感じられません。作者は、わずらわしいシールドからも美しさを感じ取って、光や色彩がめまぐるしく交錯し重なり合うモチーフを丁寧に描き込んでいます。食事に飽きて食べ物で遊びはじめた弟がかわいらしく、このような状況でも変わらない家族への視線に気持ちがほっこりします。
(作品解説:顧問)