校長挨拶

伝統の未来

 

千葉県立千葉中学校・千葉高等学校 

校 長 増田 武一郎

 

 本校は明治11年(1878)に千葉師範学校構内に、千葉中学校と称して創立されたのが始まりです。福沢諭吉『学問のすゝめ』が世に出た4年後、西南戦争で西郷隆盛が自刃したのはまだ、前年のことでした。日本の近代化の道筋がまだ不確かな中で、中等教育を形にする先見が先人にはあったと思います。その後、様々な改編を経て、昭和23年(1948)には学校教育法により、千葉県立千葉高等学校となり、平成20年(2008)には中学校が併設され、併設型中高一貫教育校となりました。令和11年(2028)には創立150年を迎えます。

 日本の近代化とほぼ同じ歩みを進めてきました本校は、日本社会のありようとともに長い歴史を紡いできました。教育の営みはその時代、社会の要請に応じ、刻々と変化をしてきましたが、先人が本校の礎を築いたのと同様、常に、社会の変化にキャッチアップした、最良の教育を提供する努力が、本校に継承されている伝統の本質です。

現在、我々が生きるこの時代は、AIの実装などデジタル技術の目まぐるしい発展等にともない、社会の変化が過去と比較にならないほど加速度を増しています。さらに、生徒の大幅な減少は一層進み、学校の統廃合によって地方での教育機会の減少も懸念されます。そうした背景から、令和8年2月、文部科学省は『高校教育改革に関する基本方針(グランドデザイン) ~2040年に向けた「N-E.X.T.(ネクスト)ハイスクール構想」~』を発表し、国全体としての共通ビジョンを打ち出しました。その中では、改革の視点の一つとして「不確実な時代を自立して生きていく主権者として、AIに代替されない能力や個性の伸長」を挙げています。AIが人間の能力の一部を確実に凌駕することが明らかな時代、AIに「代替されない」こと自体が教育の方向性に位置づけられるのは、教育によって、人間そのものの価値を改めて見据えなければならない時代が到来したことを示唆しています。

こうした社会の変化の中で、改めて本校の教育目標を眺めてみます。

1 民主的国家社会の有為な形成者として必要な資質を得るため,社会に対する広く深い理解と健全な批判力及び一般的教養を養成する。

2 自主的精神に富み,かつ自他の敬愛と協力によって,文化の創造と発展に貢献する円満にして豊かな個性を確立する。

3 平和と人類の福祉に寄与し,真理と正義を愛して勤労と責任を重んずる実践力並びに健康な身体を育成する。

 現代においては、表現が重々しく、古めかしく見えるかもしれませんが、「AI時代」の到来を念頭におくと、「民主的国家社会の有為な形成者」、「健全な批判力」、「自他の敬愛と協力」、「豊かな個性」、「勤労と責任を重んずる実践力」等、人間ならではの価値創造を明確に目指したものであることが浮き彫りになります。本校の教育は、決して「代替されない」人間のものです。

これからも、社会の変化のスピードが緩むことはないでしょう。我々は、生徒一人ひとりが、本校の学びを通して、こうした基盤的な力を身に着け、社会の変化に主体的に向き合い、自らの可能性を存分に発揮できるよう、努力して参ります。